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管理職の心構え
 
(その18)異質なものを引き受ける

2021.11.8

リーダー(管理職)とは、常に批判にさらされている存在です。
なぜなら、常に判断を求められ、組織のメンバーはそれに従わざるを得ない。そして、その結果に対する責任を問われるからです。ところが、その批判を口にする部下は滅多にいません。多くは黙って上司の命に従います。
だからこそ、リーダーたるもの、常に自分を客観的な視点で眺め、思い込みで間違った判断を下していないかどうかを確認し続けなければいけません。

しかし、これが難しいのです。人間にとって、自らの「思い込み」に気づくことは至難の業です。「思い込み」とは、自らの思考の枠組みそのものだからです。その思考の枠組みを自らの思考によって検証するのは、たとえてみれば、鏡を使わずに自分の顔を見るようなものだ。常人にはなかなかできることではありません。だから私たちは「思い込み」にとらわれて、逃れられなくなってしまう。それが現実の正しい把握を妨げ、ときに道を誤ってしまうのです。
思い込みにとらわれないためには、異質な考え方に触れることが大事です。それこそが、思い込みから人を解き放つ最良の方法なのです。そして、そのために欠かせないのが、組織内のダイバーシティ(多様性の受容)です。

私は東レ経営研究所に赴任したとき、毎週月曜日に朝礼をすることにしました。そこは皆が自由に話したいことを話せる場です。テーマは何でもいい。自分の仕事のこと、家庭のこと、友人のこと、最近読んだ本や旅行したことなど。その人がどんなことに興味があり、どんな考え方を持っているかがよくわかります。
さらに会社の仕事の中で改善して欲しいことも話してもらいます。
「この会社は会議が多すぎる」とか「長すぎるのでは」と言ったことや、「このような報告者は不要ではないか」などといった話も出てきます。そういうさまざまな意見をくみ上げていくことで、会社の業務を改善していくことができたのです。

異質な考え方を持つ者が同じ組織に共存することによって、そこは多様な意見・考え方・ものの見方との出会いの場となります。ダイバーシティが確保されている集団ではしばしば、意見の対立や衝突が生じることもあるでしょう。しかし、そのような摩擦を通じて、お互いの思い込みが是正され、新しい気づきや変化がもたらされるのです。
人間は誰でも、従順な人を好ましく思い、批判を口にする人間を疎ましく思うものです。そしてときにリーダーは、「人事権」という武器を使って組織の中の異質な人間や、自分にとって不都合な人間を排除してしまうことがあります。
そういうことをしてしまったら組織の成長が止まってしまいます。
リーダーには、異質な者を積極的に受け入れあえて批判を求めるだけの度量の大きさが求められます。




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