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こんなリーダーになりたい

13. スティーブン・R・コヴィー 7つの習慣


1996年に出版された「七つの習慣」は、「人生を幸福に導く成功哲学」であり、世界で1500万部を超えるというビジネス書としては例を見ない売上を記録し、英国のエコノミスト誌によると、著者のコヴィー博士は「世界で最も影響力のあるビジネスの思想家」である。
この本のコンセプトを一言でいうと「人を真の成功と幸福に導くものは、優れた人格を持つことであり、自分自身の内面(インサイド)から外(アウト)に働きかけることである」「成功するには原理原則があって、その原理原則を繰り返す行動をとり続ける習慣をつけることが成功するための条件」であり、ここで挙げた7つの習慣が真のリーダーを育て上げていくことになるという。
このコヴィー博士が優れたリーダーであるかどうかは別にして、「7つの習慣」は優れたリーダーになるために、何をすべきかを明示しており、「こんなリーダーになりたい」というテーマにふさわしく、今週と来週はこの「7つの習慣」のことを紹介したい。
7つの習慣のうち、第1から第3までの習慣は、自己克服と自制に関連した習慣であり、この3つは人格を形成するいわば「私的成功のための習慣」であり、次の第4から第6までの「公的成功のための習慣」とは区分される。
7つの習慣の第1は、効果的な人生を営む最も基礎的な習慣として、「主体性を発揮すること」つまり人生の責任は自分で引き受ける「自己責任の原則」としている。
いやいや仕事をするのも、喜んでするのも、すべて自分の選択であり、この自らの反応の仕方を主体的にコントロールし、周りの状況に左右されることなく、率先的に状況を改善する行動を起こすことがまずもって、求められる習慣である。
自分の人生は自分のものであり、結婚するのも、仕事を選ぶのも、つまるところ自分であり、そうである以上、そのことに責任を持たねばならない。
第2の習慣は、人生の最後の姿を描き、今日という日を始める。つまり「目的を持つ」ことである。コヴィー博士は「マネジメントは、物事を正しく行うことで、リーダーシップは正しいことをすること」という。
つまりリーダーになるために、「正しい目標を設定する」ことが前提になる。そのために「ミッションステートメント」(個人的な信条、目標設定)を常に書き出し、自分と他者に確認しなくてはならないとしている。
私は、「自分とは何者であるのか、どう生きたいのか、どんな働き方をしたいのか」そういうことは決意と覚悟がいると考えている。
それが座標軸としてあって、はじめていろいろなことがスタートする。
私は40代の半ばから、1年に一度、年末年始という一番区切りのいい時に「年頭所感」というものを書いていた。
今年はどのような考え方で、何をするかというものを、毎年書き出し、1月4日に出社したとき、部下などしかるべき人にそれを発信した。
一緒に仕事をする人には理解してもらわなくてはならないし、人に伝えるということは、責任を生ずることでもあるからだ。
そして第3の習慣は「何が重要かを正しく把握する、自己管理する習慣」である。
リーダーシップは、重要事項は何かを正しく決めること。マネジメントはそれを正しく実行することである。
自己管理する場合には、誠実さが求められる。誠実さとは、言い換えれば、自分自身の中におく価値のレベルといえる。自分の決意や約束を守る力であり、言行を一致させる力である。人格主義の基礎的な原則であり、成長の本質といえる。

先週はコヴィー博士の7つの習慣のうち、第1から第3までのいわば、私的成功のための習慣について述べた。今週は第4から第6までの公的成功のための習慣について触れたい。
公的成功は「効果的な相互依存」のことをいうが、これは第1から第3の私的成功、すなわち真の意味での「自立」がなければ成り立たないという。
ところでこの公的成功のためには、それぞれの人の信頼残高を高めておかなくてはならない。
信頼残高とは、人間関係において築かれた信頼のレベルを指し、いいかえれば、その人に接する安心感ともいえる。
そのためには、礼儀正しい行動、親切、正直、約束を守るなどの行動を通じて信頼残高を蓄積しておくことが大事である。
つまり「人格」という土台を抜きにして、スキルなどだけでは公的成功を達成することはできない。
さて、第4の習慣である「win winを考える」というのは、人間関係におけるリーダーシップの原則にかかわる習慣である。
それを実行するには、人間の4つの独特の性質(自覚、想像力、良心、自由意志)をすべて発揮しなければならない。
win win というのは自分も勝ち相手も勝つということであるが、世の中、自分は勝ち相手は負ける、相手が勝って自分が負けるとなりがちで、win winn というのはかなり難しいことである。
win win の関係を作るためには、なんといってもその基礎に人格がなければならない。
この習慣は周囲の人たちとの協働・共鳴のことで、特に、勇気と思いやりのバランスが求められる。
第5の習慣は感情移入のコミュニケーションの原則で、「理解してから理解される」ということである。
つまり、相手の目を通して人生やものごとを見つめることであるが、最初に相手を理解することが、win winの扉を開く。
人間関係について、大切な教訓は、まず相手を理解するように努め、そのあとで自分を理解してもらうようにすることで、そうしたことが、人間関係における効果的なコミュニケーションの鍵となる。コミュニケーションは、人生における最も大きなスキルである。
相手に影響を与えたければ、まずその人を理解する必要があり、それはテクニックだけではできない。日ごろ信頼関係を築き、相手が本音で話せるような人格の土台の上に、感情移入の傾聴のスキルを積み上げていかねばならない。
ほとんどの人が理解しようとして聞いているのではなく、答えようとして聞いている。
聞くということは学ぶことで、真にお互いを深く理解するとき、創造的解決や第3の案の扉が開かれる。
第6の習慣は、創造的な協力の原則、つまり「相乗効果を発揮する」ということ。
相乗効果とは、全体の合計が各部分の和より大きくなることで、これは人生において最も崇高な活動であり、リーダーシップの本質と言える。
相乗効果はそれぞれの相違点を認め、尊ぶことで、今まで存在しなかった全く新しいものが生まれることに繋がる。
本当に効果的に人生を営む人は、自分のものの見方の限界を認め、他の人の考え方を取り入れる謙虚さを持っている人だ。
さて最後に、第7の習慣であるが、これは「肉体と精神と、知性、社会情緒という人の持つ4つの大事な側面について定期的に一貫して賢明にバランスよく磨き、向上させる」ということである。
しかし、ここまで言われると、私たち凡人には「コヴィー博士、ちょっともう無理ですよ」と思ってしまう。
個人的には第6までの習慣で十分というか、6つのうち2つでも、3つでもできたら良しとしたい 。


目次
01. 土光敏夫 無私の心
02. 渋沢栄一 好奇心と学ぶ力
03. 上杉鷹山 背面の恐怖
04. 西郷 隆盛 敬天愛人
05. 広田弘毅 自ら計らぬ人
06. チャーチル 英雄を支えた内助の功
07. 毛利元就 戦略とは「戦いを略す」こと
08. マザー・テレサ 最も神の近くにいる人
09. ハロルド・ジェニーン プロフェッショナルマネージャー
10. 孔子 70にして矩をこえず
11. 栗林忠道 散るぞ悲しき
12. 小倉昌男 当たり前を疑え
13. スティーブン・R・コヴィー 7つの習慣
14. 吉田松陰 現実を掴め
15. キングスレイ・ウォード 人生に真摯たれ
16. 本田宗一郎 押し寄せる感情と人間尊重
17. 徳川家康 常識人 律義者 忍耐力
18. ヴィクトール・E・フランクル 生き抜こうという勇気
19. 坂本龍馬 謙虚さゆえの自己変革
20. 浜口雄幸 男子の本懐
21. 天璋院篤姫 あなどるべからざる女性
22. 新渡戸稲造 正しいことをする人
23. セーラ・マリ・カミング 交渉力とは粘り強さ
24. エイブラハム・リンカーン 自分以外に誰もいない
佐々木のリーダー論

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