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佐々木常夫流・7つの習慣
 
佐々木常夫流・7つの習慣(その3)

2015.5.17


物事がうまくいかないのは他人のせいではない!
インサイド・アウトの思考法を身につける



相手に変化を求めるのではなく、自分が変わることで状況を変える

みなさんがある営業チームのリーダーを任されていたとする。一緒に働いている部下は、みんなモチベーションが低く、チームの営業成績も伸び悩んでいる。こんなときみなさんは、成績不振の原因をどこに求めるだろうか。おそらく「こんなにうちの営業チームの成績が低迷しているのは、やる気のないメンバーばかり集まっているからだ」というふうに、部下のせいにしてしまう人も多いと思う。

けれどもコヴィー氏は、そうした
「アウトサイド・インのパラダイムに従った人は、おしなべて幸福とは言い難い結果となっている」(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P44)<

と語っている。
 アウトサイド・インとは、「外から内へ」という意味だ。物事がうまくいかない原因は、自分を取り巻く環境や他人のほうにあり、「あの人が○○をしてくれないから、自分は幸せになれない。自分が幸せになるためには、あの人に変わってもらわなくてはいけない」というように、外部に変化を要求することで自分の幸福を得ようとする思考法である。
 しかし他人をこちらの思惑どおりに変えるのは不可能である。なぜなら他人もまた、その人なりの思惑を持って生きているからだ。
 ではどうすればいいのか。コヴィー氏はアウトサイド・イン(外から内へ)の思考を捨てて、インサイド・アウト(内から外へ)の思考法を持つことが大事だと言う。つまり他人に変化を要求することで状況を改善しようとするのではなく、自分を変えることで状況を改善するのだ。
 冒頭の営業チームの例で言えば、部下のモチベーションが落ちているのは、自分のリーダーシップやマネジメントのあり方に問題があるのかもしれない。自分が変われば、部下のモチベーションが上がる可能性は十分にありえる。
 これは結婚生活も同じである。関係が冷え切っているとき、夫婦はその原因を相手のせいにしがちだ。しかし原因は相手にあるのではなく、相手の気持ちを理解することを怠っていた自分にあるのかもしれない。
 これについては私にも経験がある。私も妻との関係がうまくいかず、別居状態に陥ったことがある。私の妻は、長年うつ病と肝炎に苦しんでいた。病気のために何もできなくなった彼女に代わって、私が家事などの家のことはすべてやっていた。私の心の中には、「家族のことはみんな俺がしてやっているのだ」という傲慢な気持ちがあったのかもしれない。そのことが彼女を苦しめ、夫婦の溝を深めることにつながっていたのだ。けれども決定的な亀裂が生まれる前に、私は自分の傲慢さに気づき、態度を改めることができた。自分が変わることで、夫婦の危機を乗り越えることができたのだ。
 コヴィー氏も、こんなふうに述べている。
インサイド・アウトのアプローチでは、たとえばあなたが幸福な結婚生活を望むなら、まずはあなた自身が、ポジティブなエネルギーを生み出し、ネガティブなエネルギーを消し去るパートナーになる。(中略)信頼されたければ、信頼されるに足る人間になる。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P43)

インサイド・アウトは『7つの習慣』全体を貫く思考法

 インサイド・アウトの考え方とは、「自分が成功を収めたり幸福になるためには、まず自分自身が変わる必要がある。自分の内面から始めなくてはいけない」というものである。これは『7つの習慣』の本全体を貫いている思考法である。
 そもそもコヴィー氏が唱えている「人生で永続的な成功を得たければ、まず自分の人格を磨かなくてはいけない」という人格主義自体が、インサイド・アウトの考え方に基づいている。
 またこれからくわしく述べていくが、「7つの習慣」では、第1の習慣から第3の習慣までは、「私的成功の習慣」といって自分がしっかりと自立した人間になるための習慣について取り上げている。そして自立を果たしたうえで、第4の習慣から第6の習慣では「公的成功の習慣」といって、他者と有意義な関係を築きながらより大きな成功を得ていくための習慣について述べている。

まず私的成功が公的成功に先立つのだ。種を蒔かなければ収穫できないのと同じで、私的成功と公的成功の順序を逆にすることはできない。あくまでもインサイド・アウト、内から外へ、である。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P56)

「まず自分が変わることで、状況を変える」というインサイド・アウトの思考法を身につけられないと、「7つの習慣」を体得することはできないわけである。

「7つの習慣」とは、
依存から自立、相互依存へと成長するための習慣

 

「7つの習慣」を実践することで、正しい方向へ自分を成長させる

 ここまで『7つの習慣』の中に出てくる「人格主義」、「原則中心の生き方」、「パラダイム」、「インサイド・アウト」といったキーワードを解説してきた。
 コヴィー氏は、人間社会の普遍的な原則を自分のパラダイムとすることで、人格を磨き続けることが大切だと語る。また他人や周囲に変化を求めるのではなく、自分が変わることで状況を変えていこうとするインサイド・アウトの思考法を持つことが大事だと言う。
 物事がうまくいかない要因を他人や外部環境に求めるのは簡単ですが、自分の問題として引き受けてこそ人は成長を遂げることができる。また原則中心のパラダイムで物事を判断して行動することによって、人は自分を正しい方向へと成長させられる。
 そして人は正しい方向へと成長を遂げていくことによって、周囲から信頼される人間になり、また多くの人たちと良好かつ良質な人間関係を築けるようになり、永続的な成功を得ることができるというのがコヴィー氏の考え方だ。
 ただし「人格主義」や「インサイド・アウト」の生き方や思考法は、知識としては理解できても簡単に身につくものではない。「常に人格を磨き、インサイド・アウトで思考する」という態度を習慣化することによって、初めて自分の血や肉になっていく。


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