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佐々木常夫流・7つの習慣
 
佐々木常夫流・7つの習慣(その20)

2019.1.8

メンバーに仕事を任せることでチームの目標を実現する


■使い走りのデリゲーションでは、効果は限定的になる

 チームとして第U領域を決めて仕事に取り組んでいくときには、自分一人で何もかも背負い込もうとせずに、メンバーに任せることが大切になる。
「自分でやったほうがうまくできるからと思うかもしれないが、人に効果的に任せることができれば、自分の能力を何倍にも生かせる」(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P231)
とコヴィー氏も述べている。 他者に物事を委任することを英語でデリゲーションと言うが、コヴィー氏はデリゲーションには、「使い走りのデリゲーション」と「全面的なデリゲーション」があると言う。 使い走りのデリゲーションとは、仕事の場面でいえば、リーダーが部下に対して「今月の売り上げ目標を達成するために、まずこの資料を作成してA社に持って行き、A社では担当者にこういう話をしなさい。そして次に……」といったように、具体的な指示を細かく出していくことをいう。部下に自分の分身として動くことを要求するわけである。このやり方だと自分が命じたことを部下がちゃんと守っているかどうか、いちいち目を光らせていかなくてはいけない。ですから自分がマネジメントできる部下の数も自ずと限られてくる。するとデリゲーションによって得られる成果も限定的なものとなる。

■失敗も織り込み済みで、部下に仕事を任せる

  一方全面的なデリゲーションについて、コヴィー氏は次のように述べている。
全面的なデリゲーションは、手段ではなく結果を重視する。手段は自由に選ばせ、結果に責任を持たせる。初めは時間がかかるが、その時間は決して無駄にはならない。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P235)
全面的なデリゲーションでは、前述した「今月の売り上げ目標」の例でいえば、部下に目標は示すが、手段については全面的に任せる。
売り上げ目標を達成するために、A社に行くかB社に行くか、それともC社にするか、部下に自分で考えて判断をさせる。 もちろんそのぶん失敗する可能性は高くなる。A社のほうが明らかに契約が成立する可能性が高いのに、部下はB社のほうを選ぶ場合もある。しかしリーダーは、それが致命的な判断ミスになる場合を除いて、あえて部下に失敗を経験させることも大事である。なぜなら人は失敗を通じて学び取り、成長していくものだからだ。
P(成果)とPC(成果を生み出す能力)でいえば、失敗をすればPを出すことはでないが、部下のPCを大きく伸ばすチャンスにはなるわけだ。中長期的な目で見れば、チーム力が上がり、より大きな成果を上げることへと結びついていく。ただしリーダーは、部下が失敗したときには「どこで判断を間違ったのか。何がいけなかったのか」を反省させ、「同じ過ちを繰り返さないために、次回からはどうしていくか」をしっかりと考えさせることが大切になる。反省なき経験をいくら積んでも、人は成長しないからだ。ともあれ大事なのは、今は未熟だとしても、部下の「成長する可能性」を長い目で見ながら信じてあげること。コヴィー氏もこう言っている。
信頼ほど人にやる気を起こさせるものはない。信頼されていると思えば、人は自分の最高の力を発揮する。だが、それには時間と忍耐が要る。信頼に応えられるレベルまで能力を引き上げる訓練も必要だ。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P243)
ちなみにこの項目では、全面的なデリゲーションの大切さについて述べてきたが、一つだけ誤解してほしくないことがある。それは「メンバーにやり方を任せること」は、「好き勝手にやらせること」とは違うということ。私の以前の上司で、とにかく部下に何でも自由にやらせてくれる人がいた。
しかしチームとしての結果は出せなかった。なぜならその上司は部下に対して「結果に責任を持たせる」ことをしなかったからだ。ひと言で言えば、部下に甘い上司だった。 部下に仕事の「やり方」を任せることは大事である。しかしそのやり方を選択したことによって出てきた「結果」に対する責任も、同時に部下に持たせなくてはいけない。責任が生じると、部下は強い緊張感を持って仕事に取り組むことになる。どうすれば仕事を成功させるかどうか、必死になって考える。その緊張感が部下を成長させ、チームを強くするのである。

第3の習慣…最優先事項を優先する 実践ポイント

●対処療法ではなく根治療法を心がける
●タイムマネジメントとは時間管理ではない
●最優先事項を決めるのはあなた自身?最優先事項に気持ち良く取り組む環境づくりを行う
●スケジュールは立てることよりも実績表をつくることが大切


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