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佐々木常夫流・7つの習慣
 

佐々木常夫流・7つの習慣(その2)

2015.4.30


自分を変えたければ、パラダイムを変える、
すると結果も変わってくる



 人はみんな「パラダイム」という眼鏡をかけて生活している
『7つの習慣』の中で出てくる重要なキーワードの一つに、「パラダイム」という言葉がある。
 パラダイムとは、平たく言えば物事の見方や認識の仕方のことである。
そしてパラダイムは人によって異なる。コップの中に半分残っているジュースを見て、「もう半分しか残っていないのか」と思う人と、反対に「まだ半分も残っているぞ」と思う人がいるのは、それぞれ異なるパラダイムを持っているからだ。
 言ってみれば私たちは、パラダイムという眼鏡をかけて生活しているといってよい。
コップを見て、「もう半分しか残っていないのか」と思う人は悲観的なパラダイムという眼鏡をかけ、「まだ半分も残っているぞ」と思う人は楽観的なパラダイムという眼鏡をかけている。そうした眼鏡を通して世界を見ているから、同じ事象が人によってまったく違って見えてくるのだ。
 ところが人は、自分が他人とは違うパラダイムの眼鏡をかけて世界を見ているということをほとんど意識していない。コヴィー氏も次のように述べている。

 誰しも、自分は物事をあるがままに、客観的に見ていると思いがちである。だが実際はそうではない。私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件づけされた世界を見ているのである。何を見たか説明するとき、私たちが説明するのは、煎じ詰めれば自分自身のこと、自分のものの見方、自分のパラダイムなのである。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P22)

 コヴィー氏は、間違った地図を手にしても目的地にたどり着けないのと同じように、間違ったパラダイムのままでは、人はけっして成功を手に入れることはできないと言う。
 組織でいえば、部下を見るときに短所ばかりに目が向くリーダーと、部下の長所を見つけようとするリーダーがいる。前者は「人の短所に目を向ける」というパラダイムの持ち主であり、後者は「人の長所に目を向ける」というパラダイムの持ち主である。どちらのリーダーが部下の能力を引き出し成長を促すことができるかというと、断然後者である。逆に前者は、相手の長所ではなく短所ばかりを見てしまうために、部下の可能性を潰してしまうことになりかねない。
パラダイムの違いが、結果に大きな違いが生ずることになる。

パラダイムを知っておくと、意見が対立しても腹が立たない

 コヴィー氏が言うように、私たちは普段自分のパラダイムを意識できていない。
そこで大切になるのは、「自分もまた人とは異なる偏ったパラダイムを持っている」ということをまずは自覚することである。そのうえで判断を下すときの自分のものの見方に偏りがなく、妥当なものであるかを、常に現実と擦り合わせながら検証してみる必要がある。
また自分と意見が合わない人がいるときに、すぐ相手のほうが間違っていると決めつけずに、まずはその人の意見に耳を傾けてみることである。すると徐々に自分のパラダイムを偏りのないものへと修正していくことが可能になる。
 ちなみに私の場合はビジネスメールを送信するときには、伝える相手だけではなく、秘書にCCを入れることにしている。自分の考え方やメールの書き方が偏っていないか、秘書から指摘をしてもらうためである。
 また会社の会議で司会を務めるときには、まず自分の意見を言ったあとに、次に自分の意見に一番異論を持っていそうな人を指名して意見を述べてもらうようにしていた。チームの中では自分がリーダーだったとしても、必ずしも正しい考えを持っているとは限らない。現実を間違って認識している可能性もある。そこで別な考えを持つ人の意見を聞くことで、自分の偏りを直すわけである。事実私は部下からの指摘で、そうできた経験が何度もあった。
こんなふうに日々のちょっとした心がけで、自分の中にある「偏ったパラダイム」を「バランスのとれたパラダイム」へと修正していくことが可能になる。
 また「自分のパラダイムと他者のパラダイムは違う」ことを自覚していれば、自分の意見に反対意見を言う人が現れても、それほど腹が立たなくなる。そしてその人の反対意見に対してだけではなく、なぜその人がそういう意見を言うのか、相手がベースとして持っているパラダイムにまで意識が向かうようになる。すると意見が対立したときでも、相手のパラダイムを受け入れたうえで、より良い解決案を探り出そうとするようになる。
 コヴィー氏が挙げている「7つの習慣」のうち、第5の習慣は「まず理解に徹し、そして理解される」というものだが、相手を理解するためには、人はそれぞれ自分とは違うパラダイムを持っていることを受け入れることが大前提となる。

原則中心のパラダイムへと、パラダイムシフトを起こす

 これまで持っていたパラダイムが、まったく新しいパラダイムへと移行することをパラダイムシフトと言う。人々が天動説を信じていた時代に地動説を唱えたコペルニクスは、天文学の世界にパラダイムシフトを起こした。またこれまで部下の短所ばかり見ていたリーダーが、部下の長所に目を向けられるようになることも、一種のパラダイムシフトであるといえる。
 コヴィー氏は、幸せで充実した人生を手に入れたければ、今まで自分が持っていた偏りのあるパラダイムと決別し、新しいパラダイムにシフトすることが不可欠であると述べている。その新しいパラダイムとは、前項で解説した「人間社会の普遍的な原則」を中心にしたパラダイムだ。
「公正さ」や「誠実」、「正直」といった普遍的な原則に則ったパラダイムを持つことは、より正確な地図で世界を見られるようになることを意味する。その地図は時代や国や文化を越えて共通するものだから、どんな世界で生きていくときでも、どんな場面に直面にしても通用する。正しい地図を手にすることは、「幸せで充実した人生を手に入れる」というゴールへの到達を確実にする。
 そしてパラダイムシフトによって物事の見方や認識の仕方が変わることは、自分自身のあり方が変わることにもなる。

パラダイムと人格を切り離すことはできない。人間においては、あり方は見方に直結するのであり、どう見るかとどうあるかは強い相関関係で結ばれているからだ。あり方を変えずに見方を変えることはできない。その逆もまたしかりだ。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P27)



パラダイムを変えることとは、自分を変えることでもある。

まず私的成功が公的成功に先立つのだ。種を蒔かなければ収穫できないのと同じで、私的成功と公的成功の順序を逆にすることはできない。あくまでもインサイド・アウト、内から外へ、である。(『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』P56)

「まず自分が変わることで、状況を変える」というインサイド・アウトの思考法を身につけないと、「7つの習慣」を体得することはできない。


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