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ビジネスマンのための論語
 
ビジネスマンのための論語(7回)

2015.8.18

子曰く、忠信を主とし、己に如かざる者を友とするなかれ


 忠と信を第一にして自分より人格的に劣った者を友人にしてはいけない。
自分を成長させるためには誠実と信頼を大事にして、自分の人格向上に役立つような、優れた人を選んで友人にすべきだということ。
『論語』で孔子が言う有益な友とは、正直な人、誠実な人、知識のある人だ。一方、悪い友とは、ゴマをする人、見栄っぱりな人、口が上手な人としている。
 もともと孔子自身のレベルが高いので、それに匹敵する優れた人ということになると、見つけるのが難しい。それでも孔子はそうした視点で人を見、人を選んでいった。だから、孔子の周りには優れた人物が多くいた。類は友を呼ぶということだ。 どんな組織にあっても、その中に必ずレベルの高い人がいて、有能であるが故に目立つ存在となっている。そういう人の優れたところを学ぶことが大事である。
レベルの高いロールモデルを持つと、自分の目標設定が明確になり、自分の成長に加速がつくのだ。
 そのためには、そういう人を見つけ出し、付き合おうとする好奇心と積極性がいる。
 入社以来二十年間、私の仕事の多くは企画畑だったが、あるとき私が仕えていた社長から、「営業を勉強してこい」と言われ、いきなり課長としていくことになった。
 営業経験のない私を、当然私の部下たちは軽く見るだろう。
そこで、赴任する前にしたことがある。
その当時、東レで営業のプロ、営業の神さまと呼ばれていた五人の先輩に、「私は営業の経験がありません。貴方は営業の神さまと聞きました。私に営業とは何かを教えてください」と依頼し、指導を受けたのだ。
 さすがは営業のプロたちである。貴重な話をたくさん聞くことができた。
私はいっぺんに五人の優れたメンターを持ったことになる。
自ら進んで行動を起せば優れた友人や教師は現れるものである。

子曰く、我れ三人行えば必ず我が師を得。其の善き者を択びてこれに従う。其の善からざる者にしてこれを改む


 先の章句が、「自分の友人とするには厳しい基準がいる」と言っているのに対し、この章句は三人で行動をともにすればその中に必ず自分の手本とすべき者がいる、善い人を選んでそれを見習い、善くない人を見てその善くないところを自身について直しなさいと、いわば正反対のことを言っている。

 人格向上のお手本はいたるところにあるので、一人の無駄もなく自分の成長のために役立てなさいという、おそろしく貪欲な孔子の教えである。
我々凡人は特別に目立つ優れた人には注目し、自分の手本とすることには熱心だが、それほどでない人にはあまり関心を持たない。
 しかし、人にはそれぞれさまざまな長所があり、それを吸収することは自分の成長に役立つのだ。
 明治の経済人、渋沢栄一は好奇心の塊のような人物で、どんなことにも、どんな人にも興味をもってそこから学ぼうとしたという。
パリ万博の随行員となった時、随行メンバー全員に興味を持ち、一人一人から学んだという。パリでは住居の賃貸契約に興味を持ち、根掘り葉掘りそのしくみを聞いた。また下水道のシステムに驚き、どうなっているかを地下に潜って調べたという。
 普通の人を自分の師にしてしまうということは、誰からでも学ぼうとする謙虚さがあるからだ。
謙虚さと好奇心を持ち続けることが、自分の成長の原動力である。


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