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ビジネスマンのための論語
 
ビジネスマンのための論語(16回)

2017.7.17

子曰く、衆これを悪むも必ず察し、衆これを好むも必ず察す


 周囲の多くの人が嫌う人でも、本当にいやな人なのか必ず自分で真相を確かめるべきだ。反対に多くの人が好む人の場合も同じ。
周りの人たちの人気不人気に影響されずに、自分の目と耳でその人を納得するまで観察してみるのは大事なことだ。 会社勤めの時代、私は二年から三年ほどで異動を繰り返していたが、新しい部署に着任する際、気を付けていたことがあった。
それは、「部下やお客などに対する前任者の評価を鵜呑みにしない」ということだ。 特に部下への評価は注意が必要だ。
人が人を見るとき、どうしても好き嫌いや、合う合わないという要素が入ってくる。
仕事はできるが癖があったり生意気であったりする部下には、低い評価を与える傾向がある。だから部下との最初の面談の時は、前任者から聞いた評価は一度脇に置き、十分な時間をとって本人の考えや希望、不満などを聴くことが大事である。 ポイントのところで自分の目と耳で事実をつかむことが重要である。 しかし、すべてのケースを自分自身で確かめるのは不可能だし、時間も限られている。ある程度他人の判断に頼るのは止むを得ない。 それに、他人が評価する人の良し悪しは、ある一面、当たっていることもある。 人の話を鵜呑みにするのは危険ではあるが、一定の前提付きで受け入れることもまた必要なである。

子曰く、速やかならんと欲することなかれ。小利を見ることなかれ。速やかならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば、則ち大事成らず


 早く成果をあげようと焦ってはいけない。目先の小さな利益に惑わされてはいけない。焦ると見通しがきかなくなる。小さな利益に目を奪われると大きなことが成功しない。
これは町長となった弟子の子夏が、政治の秘訣を訊ねた際の孔子の返答である。 ビジネスにおいては、通常の仕事はスピードが大事であるが、重要な仕事は目先の小さな利益を上げるための拙速な対応をしてはならない。
エネルギー価格が上がったからといってすぐ商品の価格を上げたり、下請け先の仕入れ価格を根拠もなく引き下げるのではなく、自社で可能な限りのコストの引き下げ努力をしたり、やむを得ない事情があればそれを十分説明し、相手の納得を得たうえで行動に移すことが肝要だ。 一流ホテルのレストランで食材偽装事件が発生したとき、多くの経営者がカメラの前で謝罪するシーンがテレビで見られた。 目先の利益が欲しいがため、メニューの表示とは異なった食材を使用してコスト引き下げをしたことが、結局そのレストランのブランド価値を毀損させ、もっと大きな「信用」という財産を失ってしまった。 それと反対に思い出されるのは、九十五歳で亡くなった南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領の勇気と忍耐に満ちた行動である。
マンデラ氏は、四十五歳のとき国家反逆罪で終身刑となり、二十七年間の投獄を経て七十五歳で大統領になった。彼が行ったのは、反対勢力に対して民族和解・協調を呼びかけ、粘り強い交渉と説得を続けたことだ。決して焦ることはなかった。そうやって平和裡に国をまとめ上げていった。 「アパルトヘイトをなくそう」という最も大事なことを実現するために、拙速なことをせず、辛抱強く十分な時間をかけるマンデラの熱意と信念のある行動には、彼の呼びかけに反対する人たちも同意せざるを得なかった。 これぞという大事を成すときは拙速は慎まなくてはならない。


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