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ビジネスマンのための論語
 
ビジネスマンのための論語(17回)

2017.11.19

顔淵、仁を問う。子曰く、己に克ちて礼に復るを仁となす。一日己に克ちて礼に復れば天下仁に帰す。仁を為すは己に由る。而して人に由らんや


 顔淵が仁の徳について尋ねた。孔子は答えた。わが身を慎んで礼(の規範)に立ち戻るのが仁ということだ。一日でも身を慎んで礼に立ち戻れば、天下中の人がこの仁徳になびき集まるであろう。仁徳の実践は自分の力が頼りで、他人の力を頼ることは決してできない。
たった一日でもいいから自らの行動をしっかり見つめて、人として納得できるように過ごしてみなさい。そうすれば世の中は確実にその一人分だけ理想社会に近づくものだから、と孔子はいう。 社会は個人の集合体だから、たった一人だけでも正しい生き方をしているならば確実にその分だけ社会はよくなっていく。 この章句は「克己復礼」の四字熟語の語源でもある。社会を良くするも悪くするも私たち一人一人の行動にかかっている。  しかし、このように自分一人の力で自分の欲や雑念を克服することは大変難しく、孔子のような聖人ならそれもできるだろうが、我々凡人にはなかなかそうはいかない。  そのためにはやはり他人の力を借りたらいい。自分の周りにいる尊敬できる人や歴史上の優れた人物、いわゆるロールモデルを見つけ、そのありようを取り入れるとよい。


顔淵曰く、請う、その目を問わん。子曰く、礼にあらざれば視ることなかれ、礼にあらざれば聴くことなかれ、礼にあらざれば言うことなかれ、礼にあらざれば動くことなかれ


 顔淵が仁徳の実践について聞いた。孔子は答えた。礼の規則にはずれたものに目を向けてはならない。礼の規則にはずれたものに耳を傾けてはいけない。礼の規則にはずれた発言をしてはいけない。礼の規則にはずれた動作をしてはいけない。
仁とは心の裡に存在する思いやりの精神。礼とはそれが形になって外に現れたもの。 だから礼儀作法は上辺のお飾りではない。思いやりの心が自然な形でにじみ出ていなければならない。学問も政治も、最終的には外に具体的な形をとって現れるものだから礼は欠かせない。 つまり、仁(思いやりの気持ち)と礼(礼儀正しい行動)は、表裏一体のということだ。
礼に基づく行動をしていたら、仁の実践ができるということを、孔子は強調してい
る。孔子は論語の中で人として最も大事なことは、仁(思いやり)であると繰り返している。
この章句を読むと、私はマザー・テレサのことを思い出す。 マザーは十八歳の時にインドに渡り、カルカッタのスラム街でホームレスの子どもたちを集め、無料授業をするようになる。以降、貧しい人や病気の人、いわば弱い人々への思いやりの行動を一生続けた。そのバックボーンには、自分はイエス・キリスト、つまり神に捧げた身といった「無私の思想」があった。 歴史に刻まれるほどのリーダーには共通して、自分のためではなく、世のため人のためといった「無私の思想」がある。 マザーは祈った。
「主よ、私をあなたの道具としてお使いください。憎しみのあるところに愛を、悲しみのあるところには喜びを、絶望には希望を、理解されることよりも理解することを、愛されることより愛することを」
私たちが仕事をしていくときも、こうした思いやりの気持ちを少しでも持っていれば、ビジネスもうまくいくのではないかと思う。


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