ビジネスマンのための論語(21回)
2019.1.8
子曰く、君子に三戒あり。少き時は血気いまだ定まらず、これを戒むること色にあり。その壮なるに及びては、血気まさに剛なり。これを戒むること闘にあり。その老いたるに及んでは血気すでに衰う。これを戒むること得にあり
君子には守るべき三つの戒めがある。年少の時代は血気がまだ安定していない、戒めは異性関係にある。壮年になると血気が盛んになる、戒めは闘争好きにある。老年になると血気はすでに衰える、戒めは欲張りにある。
リーダーには年代に応じて戒めるべき三点がある。若き日は性欲、壮年は権力欲で権力闘争にのめり込むこと、年を取ってからは名誉欲だ。
年少、壮年のときはいわば若気の至りともいえ、まだ人格が完成していないのでまあ仕方がないこと。
問題は年老いたときだ。老いたときの生き方というのはその人の人生における思想と行動すべての総決算で、その人が人生をどう生きてきたかその人間性が試される。功成り名を遂げた人が最後に欲しいのが名誉で、人から認められたい、できれば勲章をもらいたいと思う。
私の友人で賞勲局の人がいるが、企業の社長をした人が会社を挙げてのプロジェクトを組んで、あきれるほど熱心に勲章を欲しがる話を何度も聞かされた。
そういう人に限って、権力を使っていつまでも会社に留まろうとしている悲しい人だ。
子曰く、義を見て為ざるは、勇なきなり
人間として当然すべきだとわかっていながらそれを果たさないのは勇気を欠くことである。
人はこの世に正義を実現させるために生きているのだから、正義のためには死んだとしても本望と思うべきだと孔子は言う。
しかし会社で上司が理不尽なことを指示してきたとき、それに逆らうことはなかなかできない。電車の中で走り回っている子どもがいたとしても、それをその母親の前で注意することも難しい。
勇気がないと言われればそれはそうだが、勇気をもって正義を貫こうとしないのは、それをしたときさまざまなリスクが生じる可能性があるからだ。
相手に逆切れされたり、恨みを買ったりしたらかなわない。
そうは言いながら会社で仕事をしていくうえで勇気をもって絶対貫き通さなければならないものがある。
それは倫理―コンプライアンスに関することである。
ときどき粉飾決算や食材の偽装などの不祥事が報道される。またあるメガバンクでは反社会的勢力への融資を放置していたことが大きな問題となった。
このようなことは、企業が社会で生きていくうえで見過ごしてはならない性質のものだ。
倫理にもとる行為はいかなる事情であっても絶対に阻止しなければならない。
なぜならコンプライアンスで問題を起こせば、企業は潰れるかもしれないという大きなリスクを背負うからだ。
粉飾決算をしたカネボウや食品問題を起こした雪印の事件を思い出してもわかるように、信用に傷がつくということは、企業にとっては致命的なことである。
こういう問題のときにこそまさに「義を見て為ざるは、勇なきなり」であり勇気をもって行動しなくてはならない。
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