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リーダーシップの最近のブログ記事

人を動かす力

「人を動かす力」(PHPビジネス新書 渡部昇一)は歴史に名を残す指導者は日ごろ何を考え何を拠りどころとしてどうような行動をしていたのかを豊臣秀吉、乃木希典、渋沢栄一、松下幸之助などを例に解き明かしている。
その中で指導者に必要とされる「情報力」についても触れられている。
ある高級官僚に嫁いだ婦人が日米開戦のニュースを聞いた瞬間から「日本は負ける」と信じて疑わず政府の中枢部門にいたご主人と年中喧嘩をしていたという。
彼女は父親が商社マンで戦前に何年かアメリカで過ごしその豊かさを身を持って体験していた。例えばピアノは日本ではほとんど普及していなかったがアメリカではごく普通の中産家庭にもグランドピアノがありこんなに差があるのだから日本は戦争に勝てるわけがないというのが奥さんの主張であった。
東大法学部を優秀な成績で卒業し多くの知識と情報を持つご主人の方がちょっとした末端情報から事実を読み取る力のある奥さんにかなわなかったということだ。
秀吉の例では本能寺の変の報に接するや直ちに毛利軍と講和を結び10日後には山崎の合戦で光秀を破っている。
この「信長殺される」の情報を持っていたのは秀吉だけではなかった。柴田勝家や滝川一益をはじめ織田家の主だった武将には同じ情報が同じ時期に届いていた。ところがその中で「今だ」と思ってすぐ行動したのは秀吉だけだった。
同じ情報を入手しても受け手である人間の能力によってこれだけの違いがでてくる。
そういった能力は学校の勉強では身に付かないようである。
どうしたらそういった能力が学べるか。筆者は「万感を込めて世の中を見続けることで未来を見通す直観力が養われる」という。
このへんは少し難しい表現ではあるが私流に言えば「世の中を良くしたいという志を強く持ったり可能な限り自分を成長させたいという熱い思いを持ち続けている人」には自ずから備わってくる能力ではないかと思う。


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散るぞ悲しき

2006年に大宅壮一ノンフィクション賞をとった梯久美子氏の「散るぞ悲しき」を読んだのは5年前である。 
栗林忠道中将のことは知っていたがこの本を読んで改めてこの人のリーダーとしての強さと優しさに大きな感動を覚えた。
私は栗林中将をリーダーシップある典型的な人だと感じている。 
私はリーダーに求められる資質として 現実を正しくとらえる分析力と 事を成す強い行動力 そして人をひきつける人間力が必要だと考えている。 
しかし現実にはそのようなリーダーはほとんどいない。
仕事はできるが公私混同をする人、人間性は豊かだが実行力に欠けている人などでなかなか揃っている人はいないものである。 
栗林は日米戦争の中、最も多くのアメリカ兵の死傷者を出し「アメリカ軍を最も怖れさせた男」だった。 
アーリントン墓地に硫黄島で日本軍を破ったあと星条旗を立てる兵士の像があるがそれはいかに栗林の作戦がすごかったかを示している。 
それは栗林が現状分析し波打ち際作戦をせず、島中に坑道を張り巡らし一日でも米軍の本土上陸を遅らせるべく兵に玉砕をさせなかったことが大きい。 
そして司令官は身の安全のため硫黄島の後方の父島で指揮をとっても良かったのに現地に身を置き、また司令官なのに偉ぶることもなく兵士と同じ食事をし、声をかけ士気をあげた。 
極め付きは家族に宛てた優しい心のこもった41通の手紙である。日本に残された家族を思いそれでいて書き出しはいつも「私は元気です」から始まる。 
家のお勝手の隙間風や愛する末娘のことを心配したり激励したりこんなに優しい父親がいるのだろうかと父を6歳で亡くした私は腹の底から突き上げるものがあった。
このときの2万人の日本軍の兵士たちが死ぬ間際に全員が思っていたことは日本のことでもアメリカ軍のことでもない。自分の家族のことであった。
人生において何が一番大事なことか、それは極限のとき明らかになる。


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わらしべ長者理論

勝間和代さんのあとを追いかける私
先日、日本フィランソロピー協会主催の「ワーク・ライフ・バランス実現による次世代育成のための環境整備」というシンポジゥムがあり、今マスコミに露出度が極めて高い勝間和代さんの基調講演を聴いてきました。
このシンポジュウムは東京、大阪、福岡3箇所で開催される予定で、東京は勝間さんが、福岡は私が基調講演をすることになっていること、また、私がNTTドコモから依頼されワーク・ライフ・バランスの講演をしましたが、私の前は勝間さんだったということ。つまりたまたま私が2回続けて勝間さんの後を追いかけているようなことになっていたので、若干親近感もあって講演を聴きに行ったというわけです。
勝間さんの出版する本は「無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法」「お金は銀行に預けるな」など次々に10万部を超えるベストセラーとなっており、今や有力書店には「勝間コーナー」ができるほどの売れっ子ぶりです。
その日も興味ある話をされていましたが、その中でも面白かったのは勝間流「わらしべ長者理論」でした。

目の前のことをしっかりやっていると道が開ける
わらしべ長者というのは、昔、彦造という貧乏な若者がおり、ある日金持ちになりたいと神様に拝んだら、「この神社を出たところで手にしたものを大事にするように」というお告げがありました。彦造は神社を出たところで転んで手に掴んだのはわら。そのわらにあぶを付けて歩いていたら欲しがる子どもがいてそれをあげて代わりにミカンをもらう、そのミカンを喉の渇いた女性にあげて反物をもらう、反物が馬になり、馬が屋敷になり、最後に彼は大金持ちになるという話です。
要は目の前にあることをしっかりやっていると道が開けるという教訓ですが、勝間さんは「キャリアというのは一歩一歩の積み重ね」で「人よりちょっとだけ優れたこと」をするのが成功の秘訣と力説していました。
最近の私の場合、3年前ひょんなことから家族と仕事のことが週刊誌のAERAに取り上げられ、それを読んだ東京電力の方が自社の幹部への講演に私を呼んでくれ、その講演のテープを聴いたWAVE出版の玉越社長が私に本を出版するように勧めに来て、出版したら、朝日新聞の「人」欄に掲載されたり、テレビ朝日、NHK、日本テレビ、ガイアの夜明けなどの特集番組で放送されました。

3年前と大きく変わった人生
そんなことがあって男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、障害者の会などさまざまな団体との交流へと広がり、シンポジウムやパネルデスカッション、講演などに引っ張り出されるようになり、現在では月に4,5件の講演と取材、執筆などを行うようになってしまいました。
北京の清華大学に招聘され講演したことがきっかけで中国語での翻訳出版も予定されています。
また、この本とは関係はないことですが、日本経団連でいろいろ活動していたことが、内閣府や国土交通省の審議会の委員になることに繋がりましたし、また、そんなことの積み重ねがもとで大阪大学の客員教授にもなりました。
3年前の自分と現在の自分とでは知り合えた人の数や活動範囲の広さは比べるべくもないほどの大きな変化となりました。大げさに言うと、住んでいる世界がまるで変わってしまったのです。
この話とわらしべ長者理論とは必ずしも同じではありませんが、「目の前のことをきっちりする」ということと「ちょっとだけ頑張る」ということの積み重ねが人生を大きく変えてしまうことがあるのだと感じました。


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リーダーシップにセオリーはない

最近、私は官庁の課長クラスの勉強会で「行政(官庁)の人のリーダーシップ」について話をして欲しいと頼まれました。彼らが何ヶ月もリーダーシップ論を勉強してきたと聞いて、やや揶揄して題は『リーダーシップってなんのこと』として次のような話をしました。

リーダーシップに一般論はない
それまでの勉強会で元事務次官や局長などから聴いたことを議事録で読みましたが「リーダーは先見性、洞察力、実行力が必要」「リーダーはビジョンを持て」「常に明るく」「部下を褒めろ」「改革力が重要」などのような内容でした。
では一体どうしたら先見性や改革力を持てるようになるのでしょう。そのような能力は持って生まれた資質と幼児期の教育によるものが大きくリーダーシップ論をいくら深堀りしても身に付くわけではないと思われます。
それに人の個性はさまざまで、性格の暗い人もいれば部下をうまく褒められない人もいる。両面を持つ楽天の野村監督などその最たる例ですが、だからといって彼にリーダーシップがないとは言えません。人はそう簡単に自分を変えられないもので、その人の持っている性格・人間性・能力に応じて行動するしかないと思います。
そういう意味ではリーダーシップに一般論はないとも言えます。
 
もう一つ、最近慶応大学の竹中平蔵教授の『構造改革の真実』という本の中に各官庁のトップがとったいくつかの行動が紹介されています。例えば、郵政民営化で小泉改革に抵抗した総務省幹部2人が更迭された事件、道路公団民営化で事務局の立場を利用して骨抜き工作をした国土交通省幹部、さらに財務省が自分たちの路線に与しない税制調査会の本間会長を官舎愛人同居というスキャンダルで引きずり下ろしたというエピソードなど。
このような例を見ていると、行政(官僚)の方にはあまりリーダーシップを発揮してもらわない方が良いとも言えます。つまり志の無いリーダーシップは傍迷惑だということです。
 
リーダーシップは自ら学んで掴み取るもの
私は彼らが抽象的、建前的リーダーシップ論に多くの時間を費やしているのでやや皮肉っぽく話したまでで、本当に考えていることとは少し違います。
私は会社生活の中で、若いころはそれほど目立たなかったが40代、50代になってからリーダーとして力を発揮する人を何人も見てきました。
どうしてそうなるのでしょうか。それは仕事に対する取り組み姿勢や人を理解しようという努力の積み重ねがその人をリーダーに育て上げていくからだと思います。
私は以前新聞のコラムに「仕事はもっと脳細胞を使って」ということを書いたことがあります。仕事を効率的に遂行するため、徹底的に頭を使ってビジネスマンとしてプロにならねばならない、つまり仕事力は能力ではなく努力であるといいました。
私はリーダーシップも同じではないかと考えています。
多くの人は組織の中で課長なり部長という責任ある立場になったとき、どのように行動したら組織として成果が上げられるのかを真剣に考え始めます。
例えば中長期的に結果を残すためには、ビジョンや目標設定をしなくてはならない、部下の能力を引き出すためには、褒めることも必要だが、時には厳しく叱責することもしなくてはならない、そういう姿を部下や周囲の人たちが評価する中でその人のリーダーシップが確立されていくのではないでしょうか。
リーダーシップは自ら学んで掴み取っていくものです。


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セーラが町にやってきた

ウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたセーラ
少し古い話ですが、月刊誌「日経ウーマン」が主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2002年大賞」にセーラ・マリ・カミングスさんが選ばれました。先般そのセーラさんにインタビューをしてきましたが近年、お会いした人の中で最も感動し・感銘を受けた方の一人でした。
彼女の特質は「戦略あっても計算なし」「悩む前にまず行動」という二つに言い尽くされそうです。そのひたむきさと行動力はあきれるほどで、大袈裟に言うならば私たちの数倍生き抜く力が大きいのではないかと感じるほどでした。

交渉力とは粘り強さのこと
長野駅から電車で北へ30分ほどのところにある小布施町にセーラさんが来たのは今から10年前。17代続いた老舗の「枡一市村酒造場」という会社で仕事を始めたセーラさんは「ここに自分の居場所がある」と感じ、町起こしのため、次々に大仕事をやり抜いてきました。小布施町ゆかりの葛飾北斎を町起こしのシンボルにしようと、従来ヴェニスで開催されていた国際北斎会議(北斎は日本より欧州での評価が高い)を小布施に招致することを、持ち前の実行力で実現させたのが皮切りでした。
長野冬季オリンピックではアン王女と英国選手団のいわば民間特命大使役を担い、選手団へのおみやげとして五輪カラーの蛇の目傘150本を3カ月以内に作ろうと思い立ち、30社に断られながらも粘り腰で交渉し、ついに京都の内藤商店を口説き落としました。
酒蔵を改造した和食レストランの設計には著名なアメリカ人デザイナーであるジョン・モーフォードに香港まで出掛けて頼みこみ、17代続いた造り酒屋にふさわしい和食レストランを作りあげました。そのレストラン「蔵部(くらぶ)」は町の店が通常5時で閉店するという常識を破って10時まで営業し、多くのお客を呼び寄せることに成功しました。
また、酒造りでは欧米人としては初めて「利酒師」の資格を取り、一般のお酒とは差別化された新酒「スクエアワン」を開発しました。
一方、町の人達はコミュニケーションの場を求めているし、必要だと考え、毎月一回「小布施ッション」を開催し、著名人を講師に呼ぶなど、知的で遊び心に満ちたイベントの立ち上げにも成功しました。
人口1万2千人の町に、昨年は120万人の観光客が訪れたといいます。
「私に何か能力があるとすれば、それは粘り強さです。交渉力とは粘り勝ちする能力のことです」とセーラさんは言っています。

セーラが見つけた日本、日本が見つけたセーラ
彼女の持論は「日本の地方には本当に古き良きところがたくさんあって、それを引き出し、地方の活性化につなげなくてはならない」というものであり、小布施はその成功例といえます。つまりセーラさんが日本を見つけ出したわけです。
ただ彼女のひたむきさや行動力をその周囲の人達が理解し、ひとつひとつ夢を実現していったことが成功の背景にあります。そういう意味では日本がセーラさんを見つけたわけです。
インタビュ-を終えて小布施の町を散策し、北斎ゆかりのお寺や住居を見、改めてセーラさんの成果の大きさを感じました。
セーラさんはインタビューを受ける前に東レという会社、繊維のことを勉強していたに違いありません。インタビューの中でありありとその事実がわかります。セーラさんはただやみくもに行動をしているわけではなく、相手を思いやる気持ち、気配り、そして人を楽しくさせる会話や行動に心がけています。

人を活かすのは周りの人と環境
セーラさんがアメリカのペンシルバニアにいたとしたら、これほど活躍したでしょうか。もちろん、生来の明るさと行動力で何がしかの結果は残したでしょうが小布施ほどではないでしょう。
これは、1人の人間に特長があってもその人を活かし何かを実現させるのは、その周りにいる人達であり周りの環境ともいえるのではないでしょうか。私たちが会社の中、社会の中で一人一人の良さを認め、その人を真に活かすようにしなくてはならないと、少し大袈裟な話になりましたがそんなことを感じさせられた一日でした。


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