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散るぞ悲しき

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2006年に大宅壮一ノンフィクション賞をとった梯久美子氏の「散るぞ悲しき」を読んだのは5年前である。 
栗林忠道中将のことは知っていたがこの本を読んで改めてこの人のリーダーとしての強さと優しさに大きな感動を覚えた。
私は栗林中将をリーダーシップある典型的な人だと感じている。 
私はリーダーに求められる資質として 現実を正しくとらえる分析力と 事を成す強い行動力 そして人をひきつける人間力が必要だと考えている。 
しかし現実にはそのようなリーダーはほとんどいない。
仕事はできるが公私混同をする人、人間性は豊かだが実行力に欠けている人などでなかなか揃っている人はいないものである。 
栗林は日米戦争の中、最も多くのアメリカ兵の死傷者を出し「アメリカ軍を最も怖れさせた男」だった。 
アーリントン墓地に硫黄島で日本軍を破ったあと星条旗を立てる兵士の像があるがそれはいかに栗林の作戦がすごかったかを示している。 
それは栗林が現状分析し波打ち際作戦をせず、島中に坑道を張り巡らし一日でも米軍の本土上陸を遅らせるべく兵に玉砕をさせなかったことが大きい。 
そして司令官は身の安全のため硫黄島の後方の父島で指揮をとっても良かったのに現地に身を置き、また司令官なのに偉ぶることもなく兵士と同じ食事をし、声をかけ士気をあげた。 
極め付きは家族に宛てた優しい心のこもった41通の手紙である。日本に残された家族を思いそれでいて書き出しはいつも「私は元気です」から始まる。 
家のお勝手の隙間風や愛する末娘のことを心配したり激励したりこんなに優しい父親がいるのだろうかと父を6歳で亡くした私は腹の底から突き上げるものがあった。
このときの2万人の日本軍の兵士たちが死ぬ間際に全員が思っていたことは日本のことでもアメリカ軍のことでもない。自分の家族のことであった。
人生において何が一番大事なことか、それは極限のとき明らかになる。

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