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2008年6月アーカイブ

多読家に仕事のできる人はいない

仕事をする上で本を読むことが必要か
よく、学校の教師や社会的に名のある人は本を読めといいます。
しかし会社の中で周りを見渡しますと仕事が出来ることとたくさん本を読むこととはあまり関係がないようです。
むしろ礼儀正しさ、誠実さ,信念や実行力があるといった態度の良し悪しや性格のほうがよほど仕事をする上で大事です。本はあまり読まないが朝から晩まで一生懸命仕事をしている人の方が会社の中で伸びていくケースが多い。
そもそも仕事のできる人は次から次へと重要な仕事を任されるから毎日大変忙しいので本を読む時間がないということもあります。

読書には批判精神が必要
本を読む上で大切なことは、そこに書いてあることが本当に真実かという冷静さでしょう。
例えば「会社は株主のものである」、「選択と集中が必須である」「'90年代は失われた10年である」といった論調は必ずしも正しくないというのはいまやほぼ常識になっていますが、ある時期はそれが当たり前として通っていたこともあります。
逆説的に言えば、本を批判精神もなくたくさん読むよりはむしろ本を読まない方が無駄なことを頭に入れないだけ傷が浅いともいえます。
私は若い頃ボストンコンサルタントグループのPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)を読んで自分の会社の事業にその理論を当てはめ事業戦略をまとめた事がありますが、少したってから本当に馬鹿なことをしてしまったと後悔しています。
現実の企業にあって、『金のなる木』事業には投資をしないとか、『負け犬』事業はすぐ撤退すべきだなどとは実際の責任ある経営をした人ならすぐにはそんな結論を出さないのは自明の理でしょう。
自社の営業や技術の強み弱み、マーケットやコンペティターの分析を十分掘り下げ事業全体の正確な事実把握をした上でしかるべき対応策を打つことになります。そういった意味では私はPPMの理論などむしろ学ばないほうが良いくらいに思います。

優れた人格を備えた真のリーダーになるには
それでは本は読んでも読まなくてもいいのでしょうか。今日のこのコラムのタイトルは本はたくさん読むが仕事にはいまひとつという人に対する一種の挑発です。
組織の中で真のリーダーとなるには人間力と実行力が欠かせません。人間力とはその人の言うことならば素直に聴きついていくという人間としての魅力です。そのためには幅広い知識や考え方、人間理解力が必要で、それは多くの本を精読することによって身に付けることができます。


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小学生のドミノ倒し競争 ~知恵を育て組織を活かす~

小学生のドミノカップでダントツで優勝した半田小学校
先日、NHKで放映された 「ドミノカップ2004・小学生が挑戦 ドミノ倒しスピード競争」 という番組を見ました。
全国の各ブロックで勝ち上がったドミノ倒しの有力校5校が、与えられた厳しい障害物(高い山を越える、4つの飛島を渡る、輪の中を通す、など)を乗り越え、40mのドミノをいかに早く倒しきるかの争いでした。
最初の小学校は15秒でしたが、4番目の学校は9秒にまで縮めました。そして最後に登場した愛知県の半田小学校は、実に40mのドミノを6秒で倒すという断トツのスピードで優勝をとげたのです。
予選会では、30秒も40秒もかかった学校があるというのに、同じ条件の下で何故これほどの差が出たのでしょうか。
それは、知恵の出し方とチームワークにあったようです。
優勝した半田小学校は、ドミノのスピードを上げるため、基本基材は固くてしっかり倒れるビデオテープケースを使用したわけですが、それに加えサイズの大きいペットボトルに一部砂を詰めたこと、要所要所に風船を置いたこと、風船が割れたらペットボトルが落ちる仕掛け、落ちたらドミノを押すバネの設定など工夫を重ねていました。
小学生の知恵としては部分的には出る知恵ですが、その1つ1つの知恵を組み立てて全員の協力で総合的にレベルの高い水準にした傑作でした。
他の学校も様々考え、スピードあるドミノ倒しを考えましたが、半田小学校のレベルまではいきませんでした。どの学校も全員必死で考え、何ヶ月も費やしてこのプロジェクトにチャレンジしましたが、結果的にはその差が想像できないほど大きなものになったというわけです。
このような例をみると、同じように努力しても知恵の出し方や活かし方で大きな差が出ることがよく分かります。

企業で求められるのは優れたアイディアと組織力
企業の発展で求められるのは、研究であれ営業であれ、まず優れたアイディアです。倒れるドミノの先に針をつけることで風船を割るというアイディア、風船が割れた瞬間に上の重いペットボトルが落ちてくる、それが先のドミノを強く押すようなバネを設置するなど、このドミノゲームに見られるような創意工夫が随所に必要です。企業はそういったアイディアを出せる人材の確保と育成に力を入れていかねばなりません。
一方、そのアイディアを汲み上げ、チームとして実行していく組織力が必要です。半田小学校では、それほど目立つ生徒ではありませんがメンバーの意見を良く聴き、様々なアイディアを皆で良く議論しつつまとめていく男の子がリーダーであったことも大きかった。それと全員がスピードアップに挑戦し、なんとしてでも目標を達成しようという気持ちに燃えたことも大きかったようです。それはその小学校の生徒達、先生、父兄など学校全体の雰囲気でもありました。
企業でも先見性と決断力ある優れたリーダーの存在とともに、皆と力を合わせてより良い成果に繋げようという企業風土が不可欠でしょう。企業の中でそういった知恵をいかに生み出すか、あるいは生み出した知恵をいかに経営レベルの課題として実行していくか、即ち知恵を生み出す仕組みと、それを活かしていく組織力の強さが企業競争力の源泉ではないかと思います。
小学生のドミノ倒しの話から、やや大袈裟な話となりましたが、子供たちが熱心に知恵を出し合いそのアイディアを皆で実行していくシーンを見て、ひどく感動し、つい企業経営を考える話となりました。


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E-メールを見るとその人がわかる

メールは便利
先日、大学時代の同級会の連絡が郵送されてきて出欠の返事は電話かFAXで欲しいということであった。
私は大学時代所属していたワンゲルの同窓会の幹事をしているが、数年前から通知、返事、名簿はすべてメールである。
このような会でメールを使うか使わないかで驚くほどの差がある。後者は案内を書いて切手を貼って郵送する、住所が違っていたら戻ってくる、連絡がなければ電話か手紙で督促しなくてはならない。これらのことを幹事の秘書がしているとのこと。幹事は「この会はうちの秘書で持っている。彼女がいなければ今日こうして会うこともできない」と秘書の存在を強調する。
私のワンゲルの方はメールなので郵便代は不要だし、返事はすぐ返ってくる、住所・勤め先などの変更は簡単、だれが同窓会に出席するのか事前にわかるし、名簿は共有できる。もちろん秘書もほとんど必要ない。
即ち、情報のスピード、質量とも圧倒的な違いがある。

メールの基本は「正確さ」と「簡潔さ」
私には毎日30件ほどのメールがくるがそれを読み返事を書くのは結構時間がかかる。
毎日メールを見ていると気になることがいくつかある。
やたら写しを入れる人がいる。特にどうでも良いような集まりに欠席することを全員に写しを入れる人がいる、あんたなんか欠席しようと関係ないよと思ってしまうこともある。
「おはようございます」というメールを平気で入れる人がいる、こちらが開くのは夜かもしれないのに。メールを受け取る相手の視点になっていないからだろう。
「いつもお世話になっています」「お忙しいところ申し訳ありません」などというのはほとんど意味がない。それよりまず用件だろう。
「お元気ですか」という人がいる。そういわれたら「元気です」と答えないといけないような負担を感じる。件名に「お礼」「ご連絡」と入れる人がいるが、あとで検索する時見つけるのに苦労するので避けるべきだろう。
メールの基本は「正確さ」と「簡潔さ」であり仕事上どうでも良いこと、時候の挨拶など省くのはお互いビジネスを無駄なく効率的に進める上で鉄則である。
ときどき気の利いたメールに出会う。「このメールへの返信は不要です」「変更あるときのみ返信ください」「急ぎのメールではありませんので時間のある時お読み下さい」など。
先日ある友人に私のホームページを作成してもらったが、彼からの連絡は「佐々木常夫のホームページ1」次の連絡は「佐々木常夫のホームページ2」であり、結局 21で完成したがこのメールの検索は実に容易であり、このようなタイトルの命名は秀逸である。

メールを見ればその人の性格・能力がわかる
仕事が出来る人かどうかその人のメールを見ればすぐわかる。
まず結論から入る。「今日の午後からの中計に関する生産との打ち合わせは○○専務が急に社外との打ち合わせが入ったので延期します」などとは書かない。「本日午後の会議は延期します」理由を伝えたいのなら後から入れる。読むほうからすれば専務がどんな理由で出られないかどうでも良く、要は会議がなくなることが重要なのである。
また複数の連絡事項がある場合は箇条書きにし、おまけに「以下3点を連絡します」とくる。
なにが優れているかというと「正確」かつ「簡潔」ということで、そのため良く考えているか、相手の立場に配慮しているかということである。
だから「返事をお待ちしています」などとは書かない。どうしても返事が欲しい時は「できましたら15日ごろまでお返事をいただけるとありがたい」と具体的な日を入れる。
メールというのはたしかに連絡、報告、相談などの単なる通信手段にすぎないが、メールによって事実がきちんと伝わるか、業務を効率良く遂行できるかということにも繋がっていくことを忘れないで欲しいものである。


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少子化社会を乗り切る知恵を

少子化は日本人が選んだこと
今や日本の合計特殊出生率は1.26人で人口を維持するに必要な2.07を大幅に下回っており今後日本の人口は大幅に減少していく。
少子化の原因は結婚以前の問題として結婚年齢の上昇と非婚の増加ということがあり、結婚してからの問題としては子育て家庭の経済的苦しさと適切な保育サービスの欠如、さらに夫あるいは職場の無理解や協力不足などがある。
民間の保育所に入れた場合、費用は保育料や保育ママへの支払いなどで月10数万円もかかり子育て家庭の経済的負担は重い。認可保育所はずっと安くて済むのだがここが狭き門で待機児童は数10万人にも及ぶ。
保育所に預けても時間延長は難しく、夕方には子どもを迎えにいかなくてはならないという保育サービスの未熟さが待っている。
加えて、依然として職場は長時間労働を是とする雰囲気があり、女性にとって子育ては大変辛い仕事になっている。この結果、女性の7割が結婚・出産・育児を機に退社することになる。
保育所不足の問題など30年も前から問題視されておりこんな基本的問題が未だに改善されていないところなどは、この国がいかに子育てに無関心であり続けたかという証左であろう。
そういう意味では晩婚化・非婚化も含め、少子化は日本人が選んだことの結果と言える。

もっと少子高齢化社会を生き抜く知恵を
日本の財政問題を考えると政府が抜本的子育て支援を実行するかどうかは心許ないし、職場の多忙さが競争力の源泉と考えている多くの民間企業の経営者が働き方を劇的に変えようとする可能性も少ない。どうも日本の少子化の底流は根強くそう簡単には変わらないとみたほうがよいかもしれない。
ところでなぜ少子化によって人口が減るのが困るのか。労働人口が減ると成長が見込めないと言ったり、年金財政が破綻するからという。本当にそうだろうか。
生活者の立場から言えば人口が減ったらいいこともある。不動産価格はきっと安くなり住宅取得が楽になるし、通勤ラッシュも緩和するし環境問題的にはプラスである。
世の中、企業は争って似たような新製品を作り、多くの宣伝をし、大量の生産物とサービスを世に供給している。ビールやジュースはどれを選んだらよいのか迷うほどの種類があり、街にはいたるところにレストランや飲み屋はあるがほとんどはやっていない。
現在の日本は供給過剰社会で企業や事業所が少々減ったとしてもそれほど困るとは思えないというのは暴論だろうか。

また、過去を振り返ると1955年からの15年間と1975年からの15年間の労働人口の伸び率はいずれも1%であったが、実質GDPはそれぞれ9.6%、4.6%であった。
技術革新などによる生産性の向上が寄与したからで、必ずしも労働人口が増えないと経済成長ができないということではない。特にサービス産業についてはまだまだイノベーションにより改善の余地がある。それに女性や高齢者の就業機会の推進や一定の外国人労働者の活用などの工夫も考えられる。

少子化が国民の選択の結果である以上、少子化に歯止めをかける政策を打ったところで大した効果は見込めない。今必要なのは、少子高齢化を乗り切る知恵であり、人口減少に対応した経済社会システムの構築であるといえよう。


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