今回の東日本大震災での被災地域には、自動車や電機をはじめとするメーカーに基幹部品や素材を供給する工場が集積していて、世界シェアの6~7割を生産している「ニッチトップ企業」の工場も多い。 例えば車の運転制御に欠かせないマイコンは最大手ルネサスエレクトロニクスのひたちなか市の工場の操業停止が1ヵ月半続けば世界の自動車生産の約6.5兆円が消失するといわれている。 これら高度部材の場合、たった1つの部品、1つの素材の供給が止まれば、日本全国、世界中の電機・自動車メーカーの生産がストップしてしまうことが起こりがちである(サプライチェーンの断絶)。 このため、設備の毀損規模自体は小さくても、今回の日本全体の生産へのダメージは甚大なものとなるだろう。 日本企業は誰もが同じものを作るという横並び体質から決別し小さい市場ながらオンリーワン、ナンバーワン戦略をとるというビジネスモデルの転換を図ってきたときに今回の被災が起こったとは皮肉である。 多くの付加価値の低い製品がアジア諸国に生産移転した中、日本はこうした高度部材はなんとしてでも死守しなくてはならない。 したがって、これらの工場の復旧は焦眉の急で、もし復旧に手間取れば、これら部材の生産が、これまで日本メーカーの後塵を拝していた海外メーカーに流れてしまい、二度と戻ってこない可能性がある。 東北にある「日本の宝」とも言うべき高度部材産業の集積を失えば、日本の製造業の競争力の根幹が損なわれる由々しき事態である。 幸い最近の報道によればこれらの復旧は当事者と関係者の死に物狂いの努力で急ピッチで進展しているようでこのへんのところはさすがに日本の技術力といえよう。
先週、中国から比力(ビーリー)仙女(シエンニュ)5歳のパンダが上野動物園に到着した。 最初に中国から日本にパンダが来たのは1972年、日中友好条約締結記念としてカンカンとランランであった。その後9頭のパンダが日本に送られてきてリンリンが亡くなった'08年以降上野動物園からパンダは消えてしまった。 今回は例の漁船衝突事件などで悪化した日本国内の対中感情を改善したいという中国政府の思惑が透けてみえる。 ところで今回のパンダのレンタル料として東京都が中国に支払う8000万円の金額について「いささか高い」という報道が流れている。この金額は高いのだろうか? 上野動物園の入場者を見ると、パンダが来る前年の1971年は400万人、'72年は500万人、'74年は760万人となっている。パンダがいなくなった'08年は300万人と大幅に減少した。今でも上野動物園は日本一ではあるが第2位の旭山動物園の250万人に猛迫されている。 これらの入場者数を見ると簡単には言えないもののパンダ効果はおおよそ300万人強と言えよう。 上野動物園の入場料は大人600円、中学生200円であるが小学生の来場も多いので仮に平均300円とするとそれに300万人を掛けて「パンダの経済効果(入場料だけで飲食などは除く)はざっと10億円」と言えるかもしれない。 その経済効果からみたら8000万円のレンタル料など取るに足らない金額かもしれない。 そんなお金の計算よりもパンダが到着した深夜一目パンダの車を見ようと(もちろん本物は見られない)多くの人たちが目を輝かせていた映像をテレビで見て、不愉快な話題が多い昨今、明るい話題を提供してくれるパンダに感謝したものだ。