フランスはどのようにして出生率を上げたか
欧米の出生率をみると1984年は日本、アメリカ、フランスともに1.84であった。
その後、日本は急激な階段を走り降りるように2005年の1.26まで出生率を下げていった。
それに対しフランスは1993年まで日本と同様下降線を辿るが、さまざまな少子化対策を打つなどして、ついに2006年度は1975年度と同じ2.0の出生率にまで回復させたのだ。
何がフランスをここまで変えたのだろうか。
その背景は3つほどあるようだ。
1つは、フランスは社会主義的な大きな政府が所得再分配政策をとっており低所得でも安心して子供を育てられること。
2つ目は職場での男女格差が小さく、女性が仕事か子育てかの二者択一を迫られることがないこと。
そして最後の3つ目は「週35時間労働」のように労働時間が短いため男女共に育児や家事に参加できるということである。
少子化対策についていうと1970年代に男女平等賃金法、雇用の性差別禁止法、育児休業法など働く女性に優しい法律を次々に策定していった。
また法定育児休暇は3年であるがこの育児休業法は子供が3歳になるまでフルタイムから全休業までいくつかの働き方を選択できる。
フランスでは子どもは3歳から保育学校(小学校就学前校)へ行くことができ授業料は無料なうえ保育学校での時間は8時半から16時半(18時まで延長可)までと親にとってはありがたい長時間である。
それになんといっても大きいのが税制のバックアップで所得税がN分N乗方式といって世帯収入を人数で割って税額を算出する。つまり子供が多ければ多いほど課税所得が少なくなり払う税金は本当にこれだけでいいのかというほどの低さである。
フランスの例を見て日本もそうした政策を打てば少子化を回避できるのではないかと考える人も多いと思う。しかしそれは疑問である。
その理由の1つは日本人の持つ家族観であり「稼ぐのは夫、家事育児は妻」という考え方は牢固として残っている。
これほど女性の社会進出が盛んになってもその傾向は容易に変わらないし子供が出来るとそれを育てる責任は常に女性サイドにある。
子育て支援を国民が本気で考えているのか
もうひとつは家族政策を進めるのに障害になっている国民の意識である。
私の出身地である秋田県の寺田知事は2007年に子育て新法の導入を打ち出した。これまで4%だった県民税に0.4%を上乗せして年間25億円を集めて県独自の子育て支援に使おうとするもので自治体として初めての試みとして注目を集めた。
県民へのアンケート結果ではこの支援策が秋田県の発展に繋がると考えた人が70%いたのは健全な結果である。それにもかかわらず、それでは新税を負担するつもりがあるかという問いには70%が反対したのである。
結局この法案は流れてしまうがこの結果に私は大きな衝撃を受けたし、またこのことは我々に大きな示唆を与える。
今日本国民に同じアンケートを取ったら同様な答えが出るだろう。
つまり現実の生活、目先の損得が長い目で見れば正しいであろう政策や理想を打ち破ることになるということだ。
日本国民は欧米に比し目先のことばかり追いかける意識の低い国民性なのか。私は決してそうは思わないがそのことを書くのは他の機会に譲りたい。
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