35歳で勝負は決まり 私は30代後半に課長になったとき仕事の進め方について課員にいくつかのメッセージを伝えましたが、その最初のセンテンスは「3年で物事が見えてくる、30歳にして立つ、35歳で勝負は決まり」というものでした。 これは会社に入って3年もたてば、会社の仕事、仕組みなどが理解でき、30歳になれば完全に一人前の仕事ができる。そして35歳になればビジネスマンとしての能力、評価は確定するということを言ったつもりです。 つまり35歳になれば相当な責任ある立場に立てるということでもあります。 ところが多くの大企業は、35歳では部長にも取締役にもしてくれません。優秀な人材はそれから何年も待たねばなりません。 待ちきれず会社を飛び出す人もいますが多くの人は我慢しながら当座の役割期待をこなしていきます。 それでは思い切った若手抜擢がいいのかというとこれが意外に難しい。仕事はできるがリーダーとしての人間性や胆力が欠如していたりするし、抜擢した若い人の部下にそこそこ優秀な先輩がいるとチームとしてのパワーアップにつながらなかったりします。 多くの企業はそういうリスクを避けるため、基本的には年功序列プラス能力主義を採用することになるわけです。
若い人にはポストでいい仕事を 会社が危機的状況を迎えたり、重要な事業改革が求められたりした時、その時誰がリーダーになって実行するかそのリーダーによる結果の差は大きい。ですが、そういう人を誰がどのように見分けるのでしょう? 課長や部長のときは平凡だと思われていた人がトップになって意外に大きな能力を発揮する場合がありますし、またその逆の場合もあります。担当の事業業績を上げた人を選ぶと言ってもそういった結果が実はその人の力によるものでなかったりします。会社は人事については当たり外れの連続を宿命的に負っています。 一方、組織全体としては、取締役が少々お粗末でも優れた社長がいれば、会社はなんとか運営されていきますし、部門長が若干力量不足でも部長がしっかりしていれば、立派に代行していきます。なんといっても会社の仕事はチームワークの積み重ねを大事にしており人材ロスをミニマイズしようとしています。 能力といえば、昔、不祥事を起こした大手商社の社長が「愚直なまでにまじめに仕事を遂行すること、正直が第一」と社員に訴えたことがありますが、愚直さや謙虚さは能力のひとつともいえます。 いずれにしても人の能力は多面的である上に、評価する人の価値観、立場によってその評価は大いに異なることになります。 いろいろありますが、それでも若さは貴重であり若くアグレッシブな時に活躍の場を求めるのは青年の特権です。 大事なことは若い人を早く偉くさせることではなくその優れた能力を発揮させうる仕事を与えることであり、働き甲斐、生きがいを感じさせる人事と風土ではないかと思います。