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60代からの生き方とは

2021.3.25

私は若いころ60代は「お年寄り」というイメージを抱いていましたが、自分がその年代になってみたらまだまだ体力も気力も十分あることに気が付きました。 
60歳のことを還暦と言いますが長い間、還暦は長生きのしるしと言われ、多くの会社も60歳を定年にしてきました。 
男性の平均寿命は戦後直後の1947年で50才、1951年に60才、1971年に70才、現在は81才です。定年制は、明治時代後期に一部の大企業で55歳として始まり、全国に広がっていきました。 
定年55歳は当時の平均寿命よりかなり長いものでしたから文字通り「終身」雇用であったと言えます。  
それが法律で1994年に 60歳定年とし、2006年には65歳までの継続雇用を義務化しました。 
一方、平均寿命は、1947年の50歳から現在の80歳(女性は87歳)まで30歳も伸びているのに対し、定年年齢は、55歳から65歳と10歳しか伸びていないのです。 
 
しかし昔はともかく、人生八十年時代の現在では、退職後、寿命を迎えるまでに20年もあるわけですから65歳定年はいかにも早すぎます。実際、いまの高齢者はすこぶる元気な人が多いですから定年など気にせず働ける間はずっと働いた方がいいのです。 
いつまでも働き続けたほうがいい理由はもうひとつあります。 
それは人間が働くことには、私たちがふだん考えている以上に深い意味や価値が隠されているからです。 
生きることの意義や目的はどこにあるのでしょう。私は、それは「自分を磨くこと」と「何かに貢献すること」にあると考えています。自分を磨くというのは、労働を通じて人間性を高めていくことですが、働くことには、そうした心の錬磨や人格の陶冶を可能にする効果があるのです。 
貴重な知識や経験を身に付けた60代の人たちがまだまだは働けるのに何もしないというのは不自然ですし社会的損失です。 
 
ただ身体が健康な間は働くとしてその働き方や生き方についてはよくよく考えてある意味覚悟を持ってその「方向性」や「軸」をブレさせないようにしなくてはいけません。 
その「方向性」とはまとめていうと、「60代からはより自立心を持って、ものごとにこだわらず、力を抜いて自然体で行動し、謙虚さと感謝の心を忘れず、ちょっとした夢を持ち、人には期待せず、それでいて少しだけ人のためになることを考え、明るく上機嫌で、自分流に生きていく」ということです。 
私は人生の価値は長さではなく、深さによって測られると思っています。 
人が幸せであるためには、人生を「長く生きる」必要はなく、それよりも与えられた一日一日を余すことなくまっとうすること。つまり、「深く生きる」ことのほうがずっと大事だと考えています。 
 
それにはいま自分の置かれた場所で、自分のなすべきことを精いっぱいなせばいいのです。 
日常生活のひとこまひとこまを真剣に、いきいきと過ごしていけば、その積み重ねがその人の人生に幸福と充実をもたらす契機となると思います。 
 
『論語』に「歳寒くして、然る後に松柏の凋(しぼ)むに後(おく)るるを知る」とあります。松や柏の木は常緑樹で、四季を通じて緑葉を保ちますが、その緑の鮮やかさは冬の寒い時期、他の樹木が枯れたときにあらためて際立つ。つまり苦労や困難、あるいは危機に出会ってはじめて人の真価がわかるという意味です。 
そのとき大切なのは、「自分の人生の主人公は自分である」という当事者意識と「自分の人生の責任者はほかならぬ自分である」という強い自立意識です。 
 
20歳から60歳まで40年間働いてきたとして、平均寿命は現在男性81歳、女性87歳といいながらこれからは100歳近くになる時代を迎えているといいます。そうすれば60歳からさらに40年間となり60歳はある意味人生の折り返し点といっていいでしょう。 
その人生の折り返し点に残りの人生を強く深く生きるため、やわらかい決意と覚悟を持ってリスタートしてはどうでしょうか。