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これからの中国を予測する

2020.12.23

なぜ中国はいまのような経済大国になったのかについては先日このコラムで書きました。
一部繰り返しになりますが3つほど理由があると思います。
1つ目は「模倣」、悪く言えばパクリです。
国家をあげて模倣に励んだ結果、短期間のうちに日本やアメリカの技術や知見を移植できたことが大きかったと思います。
2つ目の理由は「人口ボーナス期」つまり「人間の多さ」による生産・消費パワーの存在でこれはどの国でも生ずる現象です。
3つ目は「強い上昇志向」で一日も早くビジネスで成功したい・リッチになりたいという異常なまでのハングリーな欲求です。
3つ目はともかく1と2は日本の高度成長期に同じように起こったことです。

それでは今後はどうなるかということですがまず模倣問題です。
模倣によっていったん追いついてしまえばもうおしまいで、それ以上の模倣はできません
これから先は、中国の人たちが本来持っている能力に依存せざるをえないでしょう。
仮に中国人が高い能力をもっていてもそのスピードは、緩やかになるはずです。

では、人口のほうはどうでしょう。
国連は今年、中国人の年齢の中央値が38歳になり、すでにアメリカを上回ると推計しています。
過去行ってきた「一人っ子政策」の影響があり、今後、少子高齢化傾向は劇的に進むでしょう。
今まで同国の経済成長拡大を支えてきた人口拡大が止まるだけでも痛手になります。
人口が減っていくので、今までのような生産・消費パワーを梃子に、外国に影響力を行使することはできなくなるでしょう。
国内の消費が縮小していきますから、中国の企業は外に出て稼がなくてはなりません。ちょうど今までと逆の方向になるでしょう。
『世界人口予測2017年版』によれば、2050年は13億6445億人。これは2012年の13億7519万人と同水準です。
ですが2010年代の現在と、2050年頃とでは、中国の人口構成はまったく異なります。
2015年時点での中国の人口構成は、60歳以上が15.2%、そして80歳以上が1.6%(計16.8%)ですが、2050年では60歳以上が36.5%、80歳以上が8.9%(計45.4%)なのです。
これを人数で表せば、2050年の中国の60歳以上の人口は、4億9802万人で80歳以上の人口は、1億2143万人です。人口13億人の国で還暦以上が5億人という高齢者大国です。

そして中国社会の高齢化が、日本社会の高齢化と決定的に異なる点があります。
一つは、高齢化社会を迎えた時の「社会の状態」で日本は高齢化社会に入る少し前、2000年当時の一人当たりGDPが3.9万ドルですでに介護保険法などが成立しており社会的インフラが整っていました
それに対し現在の中国はやっと1万ドルになるところで社会的なインフラは整っていません。
中国での独自の調査データによると高齢者(65歳以上)の4割がなんらかの介護を必要としているということですから、これを2050年に当てはめると「要介護人口」は2億人を超えます。
想像を絶する、世界にもまれな高齢化社会が訪れると思われます。
それにしても、5億人の高齢社会とは、いったいどんな社会でしょうか?
街行く人はみな高齢で電車やバスのシルバーシートという概念すらなくなっているかもしれません。
2050年の時点での中国の青年たちは、大事にされた一人っ子の子ですからいまの日本の「ゆとり世代」のように「草食系」になっているのではないかなと想像したりしています。