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秋田の人、がんばって

2018.4.2

「JAグループへの寄稿」に掲載したコラムをご紹介します。

先日、メールマガジンで「秋田県大潟村―官民を貫く危機感が儲かる農業を進化させる」という記事を興味深く読んだ。
大潟村は八郎潟を干拓してできた村であるが、人口増減のカギを握る若年女性の人口増減率で大半が半減する秋田県にあって、唯一15.2%増(全国第2位)と予測されている。
1戸当たり15ヘクタールという広大な土地を背景に農家1戸当たりの年収は2000万円を超え豊かで住み良い近代的な農村社会を形成している。
大潟村の主力は米であるが米以外の農作物の拡大、加工品で付加価値を付けて世界へ輸出という戦略を精力的に推進している。
もう一段コストを下げつつ付加価値を上げ新しいマーケットや栽培技術を確立するという革新を進めることで「農業を産業へと生まれ変える戦略」を模索しているという。

ひるがえって秋田県全体の農業を概観すると農業県を標榜しているものの、農業出荷額はピークの昭和60年3175億円が現在は1877億円で東北で第5位。(実はこれは震災の影響で震災前は最下位が定位置)
産出額で全国上位5位に入っているのは米のみでコメの比率は65%と突出している。
ちなみに産出額トップの青森県(2759億円)は果実が25%とトップ、岩手県は畜産の主要部門すべてと工芸農産物で東北一と複合化が進んでいる。
それに対して秋田県は米以外は最下位か5位に甘んじている。
さらに食味ランキングで最高の特A米が全国的に増加(25品種)する中、秋田は「県南産あきたこまち」1銘柄しか選ばれていないというお寒い状況にある。

米偏重からの脱却、複合化や6次産業化の推進、消費者への直接販売など取り組むべき課題は明確であるが躍動的に進む気配はないようだ。
県の策定した「第2期ふるさと秋田元気創造プラン」には「国内外に打って出る攻めの農林水産戦略」「”オール秋田で“ブランド戦略を拡大し国内外の競争に打ち勝つ」とあるがこれまでの実績からみると絵空事のように聞こえる。

私は10年前に本を出版したことが契機になりさまざまなところから講演を依頼されるようになった。秋田県から呼ばれる機会も増え秋田市をはじめほぼすべての市を訪問したがそのときはできるだけその土地に泊まり、街の中や観光スポットなどをまわることにしている。

秋田市に生まれ育った私は父母が亡くなった関係でやや疎遠になっていたが、ふるさと秋田を再発見し現状を知れば知るほどふるさとのために何か貢献できないかという思いが募ってきた。
橋本五郎さんと浅利香津代さんに声を掛けられ「秋田文化会議」の世話人になり、また首都圏で秋田を支援する「秋田産業サポータークラブ」の幹事にもなって自分でできる支援活動をしてきた。
そうした中「秋田のことは秋田にいる人たちがその気になって行動しなければ良くならない」という当たり前のことを痛切に感じた。
秋田にはきりたんぽ、ジュンサイ、比内地鶏などの美味しいものがあるし、竿灯まつりや角館の武家屋敷など観光資源にも恵まれている。
そうしたものを活かすも殺すも、また農業のみならず他の産業をどう改革していくかは秋田に住む一人一人が自らの問題として捉え行動しなければならないのではないか。