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2011年3月アーカイブ

人は何のために働くのか

アメリカのアブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化した。「マズローの欲求段階説」と称されている。
第1は「生理的欲求」で生命維持のための食欲・性欲・睡眠欲等の本能的・根源的欲求でこの欲求が満たされないと人間は生きていくことが難しくなる。
第2は「安全の欲求」、第3が「所属と愛の欲求」、第4が「承認の欲求」、そして最後の第5段階の欲求が「自己実現の欲求」で自分の持つ能力を最大限発揮し具体化したいと思う欲求である。つまり人間は生活のためお金を稼ぐというプリミティブな動機から離れ、自己承認や自己実現のために仕事をするということだ。
 私はその上にもう一つ高い段階があると思う。
 それは、「人は自分を磨くために働く」というか「自分を成長させるために仕事をする」ということだ。
 人にはもって生まれた欲があり、他人を嫉妬したり嘘をついたり悪口を言ったりする。それは人の本能かもしれないが、躾や訓練によってそれらのことは修正できる。さらに磨きをかけるとだんだんと人間として高みに登っていき、人に慕われ尊敬される存在になっていく。
 いわば魂を磨くことで、物欲や支配欲、嫉妬、悪口から離れていく。
 それは自分を磨くことによって到達できる最高の人間像ではないだろうか。
 その行きつく先は神や聖人に近づくということだがそれによって、自分も人も社会も幸せに近づく。
 多くの人は到底そんな聖人君子のレベルには到達していないが人類の歴史にはそれに近づいた人がいる。マザーテレサやガンジーのような人であるが、そのような人の存在は自分も他人もそして社会も幸せになるのではないか。


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真面目に働くこと

企業経営にとってなによりも重要なことは、「真面目に働くこと、真面目に考えること」である。私の会社の属する東レグループはものづくりをする製造業であるので特にこのことが求められる。
日本の製造業はかつて、世界最高レベルともいえる製品を世界に提供してきた。
このような珠玉の工業製品をこれからも作り続けられるかどうかが、厳しい国際競争の中で生き残れるための条件となるが私は、日本人はそのDNAを持っていると思う。
例えば最近、日本人はモラルが低くなったとか治安が悪化したなどとよくいわれるが本当にそうだろうか?
例えば、日本とアメリカの刑務所人口を比較してみると、日本のそれが7万人なのに対して、アメリカでは200万人を超えている。アメリカでは、もはや刑務所が不足して入所させることができず、労働義務を課して刑を済ませているという状況にある。日本とは比較にならないほど社会が不安定なのだ。
確かに日本も、昔に比べれば治安が悪くなったかもしれないが「絶対的レベル」ではまだまだ安全な社会である。アメリカとはまるで違って、夜の地下鉄は依然として安全だし、夜に暗い道を歩いても強盗に襲われる心配はあまりない。
企業の現場でも同様で日本では、就業時間中に製造現場でタバコを吸ったり作業をサボったりする社員はいない。ほとんどの人が真面目に働いている。
よく「最近の若い人はーー」というが日本人の持っている本質的なものが変化したわけではなく少しくらい変化したといっても他の国から比べればほとんど変化していないことが多い。
日本人が以前のとおり真面目に働き品質の高い製品をつくり続けられれば、日本企業はこれからも生き残っていけるだろう。


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それでもなお人を愛しなさい

 ケント・M・キースという人が1968年「逆説の10か条」というメッセージを書いた。
 それが最近は本でも翻訳され『それでもなお人を愛しなさい――人生の意味を見つけるための逆説の10か条』として出版された。
 その本には「それでもなお弱者のために戦いなさい」とか「それでもなお良いことをしなさい」などが書かれている。
この逆説の10か条で私が最も難しいと思ったのは第1条の「人は不合理で分からず屋でわがままな存在だ。それでもなお人を愛しなさい」という言葉である。
第2条から10条までは、それはそれなりにできるかと思ったが、この第1条はそう簡単ではない。
 世の中には不合理で分からず屋でわがままな人だらけでなかなか「それでもなお人を愛しなさい」ということにはならない
鷹揚な人で大方の人を好きになる人でも10人に一人や二人嫌いな人がいるものだ。
一方で自分の家族についてはほぼ無条件で愛するし 私も3人いる子どもについては自閉症の子どもも含めみな愛している。
 また、私の妻は10年間ほどうつ病にかかったがそれなりのサポートをし彼女は回復した。
家族の生命と心を守るのは当然だし家族に対する愛情というのは無条件の愛、無償の愛だと思う。
 だったらその無償の愛をどうして他人に向けられないのだろうか?
 家族へは無償の愛ができるなら自分の友人、隣人、会社の同僚に与えてもいいではないか。
 人に与える愛情の絶対量に制限はないのだからできるだけ多くの人に愛情を注いだらいい。
 人は人に愛情を受けたらどんなに嬉しく幸せになることだろう。
 周りの人たちを家族に近い感情で愛することができたら周りの人たちは多くの幸せをつかむことになり自分も幸せになるだろう。


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財政破綻

201X年、日本の財政が破綻し国際通貨基金(IMF)の管理下に入った。
それまで手付かずだった公的年金は25%カットされ、公務員は国・地方自治体ともどこも2~3割の大幅削減、消費税はそれまでの10%から20%に跳ね上がった。
所得税や相続税もアップし、多くの国民が公共料金やローンの支払いが滞るなど日本は未曾有の過酷な事態に陥った。
ちょっと大げさな想定であるがいまのままではいずれこれに近いことが起こるだろう。
今や日本の国・地方自治体の借金は1000兆円に近づきGDPの2倍であり、先般経済危機が起こったギリシャやアイルランドの比ではない。
そしてさきほどの想定は実際かの国で起こったことである。
日本の国債の9割は国内消化だから大丈夫だなどという人もいるがそれは借金が今までの規模ならばのことでこれ以上増えたらいずれ必ず悲劇は訪れる。
先の大東亜戦争の末期、次々と日本軍が米軍に破れ始めた段階で戦況を知りえた人ならば一人残らず日本の敗戦がわかっていたのに戦争を終結することができなかった。
歴史家はなぜこのようなおろかしいことが起こったのかと嘆く。
日本の財政破綻も同じである。誰もがこのままでは国は持たないとわかっているがそれを止めることができない。
この愚かしさは一体何なのか。経済同友会などは消費税を17%にしろという。そのような話なら誰でも言える。しかし実行することはできない。イギリスなどは必死に財政破綻を回避すべく痛みを伴う改革をしているのになぜ日本ではできないのだろう。
それは日本の政治家の勇気のなさ、リーダーシップのなさなのか。それとも諸費税アップと言っただけで選挙でその党に投票しない日本人の愚かさなのか。
私は日本人の愚かさとは思わない。


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ベテランの味

ちょっと古い話になるが2週間前、日本シリーズ最終日に娘と二人で東京読売カントリーに出かけた。
前半、目も前でバーディを重ねる遼くんを興奮しながら見ていたが、途中から最終組について回った。
最後は17番で執念のイーグル、最終18番で芸術的バンカーショットをしパーで収めた藤田寛之が優勝した。
最後のパットにはしびれたがキャディの梅原敦がグリーン上で泣き崩れた姿に思わず感動の涙が出てしまった。
ゴルフはスポーツのなかでも年齢を重ねてもできる数少ないスポーツである。
最近は池田勇太や石川遼など若手の台頭が著しいが藤田のように41歳の活躍はいぶし銀のような技術力で結果を残すのを見ると中高年にはうれしいものだ。
スポーツとは違うが経済界でも年配の方の活躍が見られる。
いまでも世界の経済関係の国際会議では槙原稔さんや行天豊夫さんなど高齢の人が活躍しているがそのあとに続く人がなかな出ないという話を聞いた。
槙原さんなどはアメリカの大学を出て遊学したあと三菱商事に入社され長くアメリカ生活をしたかなり変わった会社人生を歩んだ人で通常なら社長にならなかったかもしれない経歴を持つ。
最近の大手企業の社長は自分の会社のことには精通しているが、世界情勢のこと、政治のこと、人生のことなどには関心を示さず勉強もしない人が多い。
会社で昇進していくにはそういったことは評価の対象にならないからだろう。
今の社長の選抜の仕方ではどうも世界の中で伍して戦える人材を見出すようにはなっていないのかもしれない。
そのため全体を考える日本の経済界の真のリーダーが育っていっていないのではないか。
スポーツ界の話がいきなり経済界の話になってしまったが経済界の高齢の方の活躍は決して喜べない。


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