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コロナ禍でメンバーシップ型雇用がジョブ型雇用に変わるのか

2020.10.3

コロナ禍でさまざまな変化が起こりつつあります。
マクロベースでの変化の一つは都市から地方への移動です。 これはさまざまなツールを使うことで地方に住んでいても可能なことがわかってきました。
もう一つは産業構造転換に伴う労働力の移動の変化で例えば観光・宿泊・航空・娯楽・外食などから情報通信などへの人の移動が始まっています。
さらに外国の出入国の制限でグローバルな労働移動の鈍化が生じており従来の外国人入国の急増傾向にストップがかかっています。
雇用レベルの変化では一時的にリスク回避のために安定志向が高まることが考えられます。
また失業者・自殺者の増加や経済格差の拡大、企業・自営業の減少などの社会的変化が発生します。
組織的変化としては自発的転職の減少や非正規社員の増加・副業ニーズの増加が起こるでしょう。

注目すべきはいま声高に言われている「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への転換です。
   「メンバーシップ型」雇用というのは新卒者を雇い、ジョブローテーションで人を育てていくということですが、これは終身雇用・年功序列という従来の日本の人事制度のことです。
このやり方はいわば「人に仕事がつく」という型です。
それに対し「ジョブ型」雇用というのは職務記述書(ジョブディスクリプション)で職務・勤務地・報酬など定め契約する。年齢や勤続年数は関係ないといういわば「仕事に人がつく」という型です。
すでに日立や富士通が採用していますが中途採用などのときにはこの方式がよさそうです。
このジョブ型雇用のメリットは自分の能力を活かして報酬を決めることができることやその業務に必要な人材の採用が可能になるということです。
ジョブ型雇用では契約更新時により多くの報酬を得るために仕事の量的質的拡大志向となることでより付加価値の高い仕事へ移行しますので生産性アップにつながります。
ただしジョブ型雇用には膨大なジョブ(職務)内容の言語化や成果の正当な評価と報酬への反映ができなければならないことですが多くの日本企業にはなじみが薄いことです。したがってそういった制度の整備を急ぐとともに「従業員との関わり方の再構築」が必須となります。さらに長い間の慣行、つまり雇用を守るという企業の考え方や解雇要件を厳しくしてきた判例法理の壁も高いですからかなり難しい課題です。
一方、企業としてはいま労務費コストの構造改革が求められています。つまり従来の定年は60歳で雇用の見直しをすることで給与を大幅に下げていたのが定年延長でそうはいかなくなります。
さらに生産年齢人口の減少で人手不足が起こると非正規社員の賃金が上昇することになり同一労働同一賃金の進展が起こります。さらにジョブ型雇用へのシフトも加わり全体の労務費の増加の抑制の必要が出てきます。
単なる情報伝達や業務の承認程度の業務しかしていない従来型の中間管理職はデジタルトランスフォーメーションの進展で不要であるという認識が広がっています。
こうした労務費増加傾向の中、役割期待の消失した多くの中間管理職に高い報酬を支払う理由も余裕もなくなってきているということです。企業は従来型の中間管理職を廃止したりしていまの40〜50代の高水準の中間管理職の給与を抑える動きが出てくると考えられます。